「前まではこの人の方が強かったけど…。今のこの人になら、本気を出さなくても勝てるわ。前の唯斗と今の唯斗、全く違うもの」


賢「まてまて…。さっきの話通りだったら、唯斗には勝てねぇんじゃねえのか?」


馬鹿ね…。


「人の話は、ちゃんと聞きなさいよ」


雅「何だよ?」


「唯斗は、前の頃のような護るものや覚悟がないのよ」


雅「それって、今のこいつは弱いって言いたいのかよ!護るものが無いから?」


「護るものは持ってるわよ。あなた達“仲間”がいるでしょう?でも、ただそれだけよ」


賢「…覚悟ってのは?」


「傷つき、傷つける覚悟。裏切り、裏切られる覚悟。
そして…人が死に、自分も死ぬかもしれないという覚悟よ」


私達の住むこの世界は裏切りは必然的にある。傷つけ合うことも。


だからこそ、覚悟のない人が多い。


そして、滅多にないからこそ覚悟をしない人の多い、人が死ぬかもしれないということ。


雅「じゃあ…前の唯斗にはその覚悟があったてことかよ」


「ええ。だからこそ、唯斗は強かった」


賢「そうか…」