時刻はいつの間にか今日が昨日になる頃だった。
何十人もの人が歌って踊り、騒ぎ過ぎて倒れて行っている。 さっきからバーボンを飲んでいた雅輝さんは全然変わらない。 強いのだろう。 しかしその隣の建さんは雅輝さんとは対照的に飲んで騒ぎ過ぎて眠っていた。
金色の時計に目をやりその視線をあたしに移す雅輝さん。
「もう12時過ぎちゃったな。 ごめんな蝶愛ちゃん気付かなくて。 今日は泊まってくか?」
「いえ、とんでもない! 今日は家に帰ります」
ずっと座っていたせいで痺れた足に耐えられなくなり立ち上がる。
「そうか。 遠慮しなくていいんだよ?」
こんなに沢山の酔っ払いを抱えその上あたしまでお世話になるなんて申し訳ない。
「いえ! 本当に大丈夫ですから。 この人たちどうしますか?」
辺りを見渡す。 それを追うように雅輝さんも見渡しあたしを見上げた。
「いつもの事だから、置いといて問題ないよ。
輝送ってやれ」
コップに残っていた少量のコーラを飲み干し、輝は立ち上がる。
「行くぞ」
「いやっあたし1人で大丈夫!!」
横から睨まれ腕を掴まれ、目を丸くする。
こんな夜遅くに送ってもらうなんて申し訳ない。
腕を引っ張られ部屋に出る。あたしは振り向いて雅輝さんや起きている人達に何度も頭を下げた。
長い廊下を歩いている途中、何度も手を振り払おうとした。 結構力はあるけれど、関東トップの頭には全くと言っていい程勝てなかった。
あたし、一応元全国トップだったんだけどな。
喧嘩だったら勝てるはず! なんて言い訳がましい事を考えていた。
「お前、女の癖に力強過ぎだよ」
何度も手を離そうとするあたしに輝は言った。
靴を履き替え輝は扉を開け、ローファーを履くあたしの方に振り向いた。
「バカ過ぎんだよ、お前。
こんな夜遅くに女1人ほっつき歩かせられる訳ねぇだろ」
男の1人や2人倒せるよ・・・なんて言えるはずもなく。
心配してくれているのがすごく嬉しかったあたしはちょっと酷いよね。
「ありがと」

