切れた唇から流れた血を拭い、スクバを背負い直し来た方向に戻った。
『おいっ!! 斗真何があった?』
数人のクラスメイトと廊下の先から駆け寄ってきた担任と、
『具合悪いから早退する』
目を合わせる事なく横切った。
状況が呑み込めていない先生を置いて下駄箱に向かった。
曲がった瞬間、傘立てに座っている奴が振り向いた。
『遅刻なんて珍しいじゃん』
気まずい空気が苦手な俺は自然とそいつに話しかけた。
『お前の事待ってた』
『だろうな』
口を緩ませながら、靴を出し履き替える。
『最後やられてたな』
神道 輝。
クラスの輪に自分から入ろうとしないタイプで何を考えているからよく分からない奴だった。
自分のかっこ悪い姿を見られ、オブラートに包む事なく言われ少し恥らいを感じた。
この会話がきっかけで暴走族の世界に飛び込むなんて、思いもよらなかった。

