そして、車で走って15分ほど。
繁華街から、そこまで遠くないところにどうやら目的地があるようだ。
車内は沈黙が流れているが、今のあたしには考える時間が出来てちょうどよかった。
隣にある温もりに安心できる。
……安心、しちゃってるのか。
自分の感情がごちゃごちゃだ。
……他人から冷静な目で見れば、あたしって悲劇を気取っているだけなんだろうな。
自分だけが悲しいって思ってる可哀想な人。
自己陶酔しちゃってる。
あたしは悲劇のお姫様って感じ?
……なんか、柄じゃないかもな。
なんて思っていたときに車は止まった。
そして「着きましたよ」と、運転手さんに言われたのであたしは軽く会釈をして車から出た。
そのあとに金髪は続いて降りる。
降りたところは……壁にでっかく赤と金のスプレーで[聖龍]と書かれた…何て言えばいいのかな?
家とは違うけど……、
とにかく、大きな建物がそびえたっていた。
……何階建て?
その建物をぽかんと見上げているあたしの頭をぽんぽん、と金髪頭は叩き、「行くぞ」と言って先を歩き始めた。
一瞬、その行為に戸惑う。
頭ポンポンなんて、あたしには初めての経験だった。
でも、胸の中に小さく生まれたときめきを隠すように声をあげる。
「え?ちょっと待ってよ?ここ、ホテルじゃないよね…?」
その言葉に先を行っていた金髪は立ち止まり、怪訝そうな顔をしながらこちらへとやって来た。
「ホテルなんか行くかよ。ここ、俺らの倉庫だから」
「そ、倉庫…?」
倉庫って何?