さっきのスカウト男の時に感じた一瞬の気の迷い。
今まで、そんなことなかった。
罪悪感なんてもの感じなかった。
でも本当に一瞬…あたしの中で何かが動いた。
それが怖くてあのスカウトから逃げてしまったのかもしれない。
そんな事よりも今、一人になることの方がよっぽど怖いのに。
あたしはそのまま道の真ん中にしゃがみ込んでしまった。
もう、泣きそうで、泣きそうで。
咲哉君の冷たい目があたしを襲う。
チビの冷たい目があたしを襲う。
そして「あたしは死ねばいいの?」と、自分の発言があたしを襲う。
誰か…誰か……助けてよ。
あたしを強く抱きしめてよ。
「誰か……」
でも、そんなあたしの願いは街の雑音に吸い込まれてしまった。


