「…マジで?」
少し驚いたような咲哉君の顔。
そんな顔ですらイケメンだ。
「うん…。何だかね?すっごい怖かった」
そう言ってフェンスにもたれている咲哉君にそっと寄りかかる。
…暖かい。
布越しだけど、ちゃんと体温を感じれる。
咲哉君は今までの男と違う気がする。
なんか安心感がある。
そして…聖龍とよばれているあいつらも今までの男とは違う。
でも咲哉君とは正反対。
あたしを守る存在の男のはずなのに、聖龍はあたしを苦しめる。
咲哉君は何も言わずにタバコを吸っていた。
そして、咲哉君が吸い終わったタバコを足でもみ消したとき…。
「…莉々香さ?なんで俺なわけ?俺より現役のあいつらのがいいだろ?俺にこんなことするよりな」
そう、咲哉君はそっとあたしの肩を押しながら言った。
ゆっくりと咲哉君の顔を見る。
…咲哉君?
何を言っているのかが理解できない。
……え?
また、誰かに拒絶された?
一瞬目の前が真っ暗になる。
咲哉君?
でも、咲哉君はあたしを見て優しく笑ってくれて。
「冗談だよ?本気にすんな」
そう言ってくれた。
……あぁ。
良かった。
「……咲哉くん」
あたしは生まれた不安を打ち消すように、咲哉君の首に腕を回して抱き着く。
全身の力が抜けていくような安心感に包まれている。
「おいおい?いきなりどうした」
そんなことを言いながらも少しだけ、抱きしめ返してくれる咲哉君。
咲哉君…。
咲哉君のこの暖かさが、この匂いが、この安心感が___あたしにとって初めてのものだった。
「だって…咲哉君がぁ…。あたし、咲哉君に嫌われたんじゃないかって…。」
泣きそうな顔を咲哉君の首元にうずくめる。
あぁ、やっぱりあたし、今すっごく弱ってる。


