ホッと緊張感や恐怖心が薄れていくのが分かった。
「…咲哉君こそ」
咲哉君はいまだに座り込んでいるあたしのもとへと近づいて来る。
その手にはタバコとライター。
「俺?俺は…これをちょっとな?」
意地悪そうな笑顔でタバコを軽く持ち上げる。
「…教師なのにいいんだぁー?」
「まぁ、俺は特別って感じかな?」
ふぅーん、と思いながらも立ち上がって咲哉君の隣へ行く。
「で、莉々香…何でここにいるんだ?何で昨日帰った?」
「何でって…屋上のドアが開いたから、屋上で寝てたの。昨日は…理事長室にあたしがいない方がいいかなって思って」
「まぁ昨日は仕方ねーよな。帰ってくれて助かったわ。でも、ここには来ない方がいいぞ。…ってか、莉々香は二度と来るな」
心配されなくても、もう来ないよ。
二度とチビとは会いたくもない。


