「こんな暑い中お疲れ様。あたしは手洗ってただけだから、汗流してね」



これ以上汗だくでこんな場所で立ち話もあれだろう、と思いにっこりと笑顔を浮かべて会話を切り上げようとする。



「ありがとう。…でも莉々花ちゃんが俺の汗流してくれたらもっと気分良くなるかも」




……へ。



悪戯っぽく笑っている諷都くんの言葉を理解すると、顔にカーッと熱が上って来るのが分かった。



今、諷都くんが、あたしを、くどいた…!?



100パーセント冗談には違いないのだが、それでもドストライクのイケメンにこんなこと言われて舞い上がらないワケにはいかない。




「是非」



とニッコニコの笑みでそう返せば、「でも龍翔の許可は貰って来てね」と上手く交わされてしまい150パーセントの冗談だったのだなとちょっと落ち込んだ。




諷都くんの体にさわれて、諷都くんの笑顔を間近で見られるのなら一緒にバスルームに入るぐらいどうってことない。寧ろ押しかけてもいいぐらい。




うふふ、幸せかも。




結局上手いことドアの外へ押し返され、リビングから逃げてきた気持ちとは正反対の機嫌のよさでリビングに戻っていった。




少し先ほどの場面を見られて気まずいなと思うけれど快適な空間にいられるなら何でもいいや。それに特に気にされていなかったようだし。




ルンルンで舞い戻って来たあたしに何事かと龍翔は怪訝な目を向けてきたが、それを無視して龍翔ではなく瑞樹の隣に腰掛けてダランと時間を過ごした。