ごく自然にあたしの手の中にあったチョークを自分の手に収めた咲哉くんは
「これちょっと難しかったかぁ?でもここを場合分けして、数字はデカくなるけどこの式にぶち込めばすぐ解ける問題だから」
あたしのすぐ横でカッカッと問題を解いていく。イケメンとか関係なしに、咲哉くんの授業は分かりやすい。
「で、解いてけば……これが解になるっと。ちゃんと最初の範囲と解があってんのか確認しとけよー」
チョークのついた手をパンパンとはらった咲哉くんは……。その手であたしの頭をグシャグシャっと撫でた。
「ちょ…!」
とっさに撫でられた頭を押さえてしまったあたし。
そんなあたしをゲラゲラと笑っている咲哉くんはあどけなく、あたしも思わず笑みがこぼれてしまう。
「っハハハ、チョークついてないから安心して席戻れっ」
はぁい、と小さく返事をしてから自分の席に向かって座った。
自分の席に戻る途中、女から今までにないほど睨まれたが……そんなことは今のあたしには全く気に留めることでもなかった。
赤髪……遼様が、今の一連のやり取りを見ていたことにも気づかなかった。