ぎゅっと咲哉くんの腰に回している手に力を込めた。
「咲哉くん冷たぁい」
ふふふ、なんて笑ってる自分。
咲哉くんが今どんな顔をしているのかとても気になった。
顔を咲哉くんの胸に押し付けているから表情が見えないのだ。
無表情だったり怒ってる顔してたらやだなーって思うと顔をあげれない。
「……ほら、もう離せって。な?」
さっきとは違い、子供を諭すような優しい声を掛けられる。
それが嬉しい反面、子ども扱いを受けたみたいでいやだ。
あたしは、ただ咲哉君に迷惑をかける餓鬼だ。
我儘ってことは分かってるんだけど、自分を止める方法が分からない。
こうやって毎日咲哉君に時を見計らって抱き着かないと、おかしくなりそう。
よくも悪くもあたしの中で何かが変わっているのだ。
「やだぁー」
でもいくら咲哉君は口であたしを注意するものの、強引には引き離してこないから少し嬉しい面もある。
喜ぶべきことかは分からないけれど。
「さっくやくーん」
ちょっとした出来心でぎゅーっと咲哉くんに胸を押し付けてみる。
「ほら、離してって。何回言わせる?」
「んー、あたしが離れる気になるまで」
しかし咲哉くんは無反応。
……おっかしーな、と思ってみたりもする。