「………莉々香っ!」








どこかぼんやりとする意識の中、誰かに声をよばれた気がした。










「莉々香、おい莉々香!」









「ちょっと、すみません!もう少しだけ離れたところに居てください!!」









「……莉々香、大丈夫か…?」














顔を横に向けると、なぜか必死な顔をしている咲哉くんがいた。











「さくや…くん」











すーっと、胸の苦しさが取れていくような気がした。









苦しかった呼吸もだんだんと落ち着いて来る。










「……櫻井さん、そのままゆっくり呼吸続けて」










ずっと咲哉くんを視界に移したまま、あたしは浅い呼吸を繰り替えした。









少しだけ、少しだけ











息が苦しいときにこのまま死んでしまうのではないかと思ったけれど。











ただ咲哉くんの存在を確認しただけで恐ろしいほど心が落ち着けた。











いつも感じる安心感をこの時もまた感じていた。




















あたしは自分がボロボロと涙をこぼしていることに、気づいていなかった。