体がフワリと浮き、暗闇の奥底に落ちる感覚で目を開けた。









咄嗟に身を起こす。







………ゆ、夢……?







先ほど感じた浮遊感は、もうすでに消えていた。







……あぁ、こんな気味の悪く変な感覚はよく起こる。









組んでた足などが自然に崩れてしまう時、その衝動が夢では大きく感じられるだけだったはず。









……あー、最悪。








そんなことを思い出しながら髪をかきあげようとすると、左手に僅かな痛みが走った。










体を横にひねり左手の方を見る。







「は?」









なんと左手は点滴に繋がれていた。









周りを見渡すと確実に病院の個室だった。










……そういえば、倉庫で喘息を起こしたことを思い出した。









体にそこまでのダルさはないが、痛む頭があたしに熱があることを訴えている。










やらかした。









思わず頭をおさえた。










きっと、そのままあたしは気を失ってしまって病院に運ばれたのだろう。







色んな意味で、失態を犯してしまった。









その中でも一番大きいことは、病院に来たからには保険証を使わないといけないことだ。









必然的に、父親のことが病院に漏れる。









そして父親もあたしが病院に運ばれたことを知る。









すると父親は漏れることのない情報のはずだけど、病院に大量の寄付金という名の口止め料を送るのだ。










………それが、どれだけあたしを苦しめていることか。









そして見る限り、あたしが以前通っていた病院ではない。









あの病院は、あたしをVIP扱いしてもっと病室らしくない部屋に入れるからここは違う。









また父親……いや、冷血秘書に監視される日々が続くのかと思うと、胃がキリッと痛んだ。











父親はあたしの体調管理と言う名目で、一度あたしがどんな些細なことでも病院に行ったものなら、軽い火傷でもなりふり構わず強制入院させる。









そして毎日必ず冷血秘書を寄越す。











本当にやめてほしい。









さらに頭痛が酷くなった頭をより深く抱えた。









つい最近に秘書第二号と会ったばかりなのに。









でも逃げることもどうすることもできない。 









ため息を吐きそうになった時。