……自分でも、言葉の裏腹にいろんな事考えて何考えてきたかよくわかんなくなってきた。
「ふふふ、やめてくださいよ」
「社長、喜ばれると思いますよ?」
「そんなはずないと思いますし、何より私は気恥ずかしいものですから」
「そんな、お恥ずかしがらずに」
……あの人を尊敬ってできるわけないし。
ちょっと言葉間違えちゃったかな、なんて思う。
「ふふふっ。あ、他には私に向けて何かありませんか?」
「あぁ、先ほども少し話した学校のことですね。転学…嫌、編入ですか?書類もすべて社長が記入し終えました」
「あぁ、その話で。勝手に入学したばかりの学校を退学してしまって申し訳ありません…。あの学校は、少し私には合わなかったようで…。父は忙しいのにそのような相談をすることは気が引け、勝手にやめてしまいました」
「いえいえ、過ぎたことですし、莉々香さんが高校生活を楽しく送られることを社長も望んでいます」
「えぇ、新しい高校は素晴らしいところですよ。少し生徒の素行が悪いところが難点ですが、優しい子が多く、先生たちも熱意にあふれていて、理事長にもお会いしましたが若いのに素晴らしい方でした。とてもいい学校ですよ、新しい学校は。あそこならやめることなく勉学にも励めそうです」
一気に、向こうが今の学校を批判しないように言葉をつなぐ。
すべて真っ赤な嘘だけど。
「素晴らしい学校なんですね。莉々香さんがそのようなところに通えて、僕もうれしく思います。でも社長も少し危惧していることがあって…。あの学校の悪い噂は、時々耳に挟むものなんです。そして少し調べると、就職する生徒がほとんどで、大学進学率が悪いようで」
……そこをついてきたか。
「あくまで噂は噂ですよ?クラスメイトも少し派手ですが、とてもいい人たちばかりですし。それに進学率が悪くとも、過去には超難関大学へと入学している生徒も僅かですが毎年出ているそうです。なら私も、あの学校で難関大学を目指すことだって不可能ではありません。努力を続けますよ、ちゃんと」
「そうですか、心強い言葉で。なら本当に社長も私たちも安心ですね」
「心配をかけないように精一杯頑張ります」
「期待していますよ」
「えぇ、期待にお答えできるよう信じておいてください」
「そうですか。僕からの話は以上です。莉々香さんは何か社長に伝言でもございますか?」
「あぁ…、では、電話の調子が悪いので、これから先しばらくは電話を直すまで出られない、とお伝えください」
「なるほど。確かに伝えておきます」
…要するに電話なんてかけてくんな、ってこと。
それを聞いて、あたしの言葉の裏を理解しているのにいまだ笑顔の秘書さんは本当にすごい。
「では、玄関先までお見送りいたします」
「いえいえ、ここで結構です」
「そんなわけいきません。本日は、わざわざお越しいただいたのに、大したおもてなしができなくてすみませんでした」
「急な僕が悪いんですから。お茶、とてもおいしかったです。ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
「では」
ソファーでぺこぺこ頭を下げあい、すっとこいつが立ち上がる。
さっさと帰れ!なんて思いつつもこいつより先に出てリビングの扉を開け、玄関へと出る。
「今日はありがとうございました」
最後だから今日一の笑顔でにっこりとほほ笑む。
……一瞬だけ、こいつの目が見開かれた気もする。


