そしてあたしが向かいに腰を下ろすと、すぐに言葉を投げかけてくるこいつ。
「ずいぶんお綺麗にされているんですね」
「まぁ、散らかすこともないですし」
いま、隣やほかの部屋に入られたらマズイな。
「綺麗好きな方は好きですよ、僕」
なんだこいつは。
んなこと思ってないでしょうに。
「ふふ、社交辞令として受け取っておきます」
「ははは。あ、そういえば」
………何度も思う。
なんだこいつは。
「先ほどこちらへ向かう途中、騒ぎがあったんですよ」
「騒ぎ、ですか?」
「えぇ、若者の男たちがコンビニに詰めかけていて。しかも女性もたくさん集まっていて歩道まで埋め尽くされていたんですよ」
ギクリ
「そ、そうなんですか?学校の帰り道にはそんな騒ぎ見かけませんでしたけど…」
「ここらへんでしたよ?」
「なら、私の注意力の問題なのかもしれませんね?」
ははは、うふふ、と笑いあう。
……なにこれ。
もう泣きたくなってくる。
この腹の探り合い、よく頑張れてるよあたし。
「あぁ、話が逸れてしまいましたね」
「本当。つい話が面白くて」
……この姿勢がきつい。
足閉じて、背筋ピンと伸ばして、手もお行儀よくお膝の上。
服はコンビニに行くからって着替えてた清楚系のワンピースで本当に助かった。
「なら本題に入りますね?まずは、社長からの伝言です」
「父のですね。お聞かせください」
………顔、ひきつってないかしら。
「勉学を怠るな、常に聡明な女性であれ。とのことです」
たったそれだけ?
…てか聡明な女性、って何。
「勉学も劣っていませんし、女として日々自分なりに磨いているつもりです。父に心配するな、と伝えておいてくださいね」
……危うく、いつもの癖でかわいらしく首をかしげそうになる。
でもそんなことをしたらなめられる。
「わかりました、そう伝えておきます。社長もご安心なさることでしょうね、こんな立派な娘さんをもって」
「……私は、そんなたいそうな人物ではありませんよ。あくまでも普通の高校生ですから」
「いやいや、高校生なんて思えないほどしっかりしてらっしゃいますよ」
「ありがたいお言葉、感謝します」
……もうさ、しゃべってんの誰?
絶対この男、愛人の子であるあたしに向かって嫌味吐いてる。
何が娘だよ、ばーか。
めんどくさい事情いろいろ知っててよくそんなこと言えるもんだ。
冷血やろうめ。
でもまだ雰囲気が冷たくなりきれてない分、あたしも普通に言葉を返すことができる。
もう一人の秘書から言われることはもっとえげつないし、とげとげすぎて痛すぎて、こんな返答できないし、まず息すらできない。
「世の高校生はこれほどきちんとした会話はできませんよ。さすが社長ですね」
……まだいうかこいつ。
社長は何もしてないって。
いろいろ教えてくれたの家政婦だって。
「えぇ、父のことは尊敬しておりますので」
「莉々香さんがそう仰られていた、と社長にお伝えいたしますね」


