そう思うとクスクスと笑いが出た。
……あれ。
あたし、笑えてんじゃん。
結構あたしの中で重くのしかかっていた“諷都君”という存在が風船以上に軽くなり、いや、逆にあたしの好きなものに変わり気が結構楽になった。
この笑い方を忘れないようにしないと。
そう思って諷都君の部屋から出た。
……どこ行けばいいんだろう。
今度は諷都君の部屋から出て行き場に困る。
「……総長室でいっか」
思いのほか独り言にしては明るい声が出て、更に笑えてしまう。
腹筋&鎖骨パワー、最高ですな。
自分の馬鹿な考えと、フェチに感謝だ。
そして直ぐ誰もいない総長室に入る。
すると起きたときには分からなかったが、デスクの上に充電器に繋がれたあたしの携帯があった。
龍翔が充電してくれたのかな?
そう思いつつも携帯をタップすると、またもや驚く履歴件数が。
着信:20
メール:554
「あと1件でメール555件になるのに」
それでも今のあたしには全然余裕があった。
____それが腹筋パワーだけのお蔭ではないことに、まだ気づかない。
そのまま暗証番号を入力し、まずは着信履歴を見る。
「……特に、普通」
中学の同級生の男子と、前の高校で同じクラスだった男子と、よく覚えていない名前がちらほら。
着信はめんどくさいから放置で。
そして次にメールを開こうとすると…。
画面にちょうどメールが届いたという知らせが出た。
あ、555件になったじゃん、なんて思う。
そしてメールボックスを開くとやはり大量にメールがあった。
迷惑メールっぽいやつはいつものように削除。
てか迷惑メールって言っても、女たちの嫌がらせ。
1日100件は届いてるはず。
それでも内容は見てないし、ちょっと作業がめんどくさいだけであんまり気にならない。
そして今めんどくさいのは男のメール。
開くと同じような内容ばっかり。
2度目の一斉送信で事実を否定する。
……あれ?
否定でいいんだよね?
龍翔とやっちゃったけど…まぁ関係ないか。
あたしは呑気に充電器から携帯を抜き取り、そのままベッドに寝転がる。
携帯さえあれば暇つぶしにもなる。
そしてふと、時間を見て見ると…。
[12:15]
じゅうにじじゅうごふん
「12時、15分」
学校遅刻じゃん。
でも今日は行く気は無い。
………咲哉君とどんな顔して会えばいいか分かんないし。
また拒絶されるのが単に怖いだけ。
さっきまで上を向いていた気持ちが、倍速で下に落ちていく。


