勢いよく首に手を回したため、そのまま諷都君の重心が後ろに倒れる。
……あれ。
そう思った時には遅く。
諷都君をなぜか押し倒してしまっていた。
……あ。
やって、しまった。
あたしは何かあると抱き着きたくなる癖がある。
……あたし、どんだけ変な癖持ってるんだろう。
自分の腕の中で動かない諷都君の様子がすっごい気になりつつも、この現状に少し現実逃避。
「……莉々香、ちゃん?」
いつもと変わらない諷都君の声。
……それが今では恐ろしい。
「ご、ごめんっ!つい、勢い余って…。直ぐどけるからっ」
慌てて諷都君の上からどけようとするけど…。
「待って」
諷都君が、なぜか静止の声をあげた。
……え?
と思った時には。
諷都君にギューっと抱きしめられていた。
「……え?」
戸惑う。
でもこれは、心臓に悪い。
諷都君の熱が少しめくれたスウェットから直に感じられる。
「好き勝手触ったんだから、少し位俺にも時間頂戴」
そして更に力が籠められる。
突然のことで、さらにパニックになるあたし。
それでも、あのヤバすぎる腹筋に抱きしめられてると思うと抵抗何て出来るもんじゃない。
すんごい今幸せ感じちゃってるあたし。
一筋縄ではいかない、あたしの腹筋と鎖骨愛。
今までの男もそこそこのいい体もってるやつはいたけど、なんか微妙だった。
昨日の龍翔は良い腹筋だな、とは思ったけど腹筋どころじゃなかった。
でも諷都君は…やばい。
やばいとでしか表せないあたしの表現力のなさだけど、言葉が見つからないほど感激してしまっている。
だからちょっと抱きしめ返してしまうあたし。
……肌と肌で、触れたい。
変な意味………変な意味だけど変な意味ではなくて、諷都君の腹筋に直接触れたい。


