とにかく走って、走って、走りまくって……。
倉庫の近くの公園にたどり着いた。
そこで僕はある会話が耳に入った。
小さな男の子と、その母親らしき人の会話だ。
「……ねぇ?ママ?さっきのお姉ちゃんとお兄ちゃん……何してたの?お兄ちゃん、お姉ちゃんのことを泣かせてたの?」
………お姉ちゃん……?
それって、莉々香ちゃん!?
僕は慌ててその2人のもとへ近づいた。
「…あ、あのッ!!その話……詳しく教えてください!!」
母親は驚いたようで、そっと男の子を自分の後ろに隠す。
「あ…。ついさっきまで、そこの道路で女の子と男の子が少し争っていたようで…。それから、女の子は車に乗せられて、どこかへ行ったようですけど…。」
…………莉々香ちゃんが、拉致られた。
戸惑いながらも母親に頭を下げ、とにかく倉庫へとまた駆け出した。
どうしよう……莉々香ちゃんが……。
莉々香ちゃんが……本当に、壊れてしまう。
龍翔はなんてことをしてくれたんだ。
龍翔が止めなければ、助けられたかもしれないのに。
僕がもっと急げば、こんなことにならなかったはずなのに。
僕はただただ後悔を募らせながら、無我夢中で走った。