「…ッ!!ヤ…!!」





咄嗟に顔をそらす。





頬に残る或斗の唇の感触が…さらにあたしに罪悪感を募らせた。







そして、こいつはあたしの上から降りてそっと毛布を掛ける。





「キミたちさ……散々莉々香を傷つけたんでしょ?なのに助けに来たって?マジで笑えるね。キミたち我儘な行動でどれだけ傷ついた人がいるか知ってる?お前たちさえいなければ…美姫(みき)は…美姫は…死ななかったのに。美姫が死ななければ美奈も苦しむことだって無かったはずなのに!!!」





こいつは聖龍に向かって叫ぶ。





でも、その時…。





「もう…或斗…。いい、よ…。終わりにしましょう……。」






美奈さんが、聖龍の後ろから出てきた。






「美奈…?良かった…。無事だったんだ…。」





或斗は一瞬、安心したようにホッとした表情になるが、直ぐに龍翔達を睨む。







美奈さん……。





殺された人が美奈さんの妹さん…?





「もう、いいの…。復讐なんて…馬鹿ことは、やめて…。」





美奈さんは泣きながら或斗に訴える。





或斗は、酷く混乱しているようで。





「な、何で…。僕は、美奈のために…。美奈の恨みを晴らすために……。」





「復讐して、どうするの?ただの或斗の自己満足でしょう?もう、これ以上人を傷つけないで。莉々香ちゃんまで巻き込んで……。もう、本当にいいから。妹は……自分から聖龍の総長の女になって……。それに、妹が死んだのは……自殺なんかじゃなくて、病気で、仕方なくて……。だから、聖龍なんて、全然関係ないの……。」






この言葉で、或斗は目を見開いた。







「……何、言って…?そんなワケ……そんな事、ありえない……。美奈だって…おかしくなって…。」







「本当…なの。或斗のお兄様から全て…聞いたの。もう、或斗……終わりにしましょ…。安らかに、妹を眠らせてあげましょう………。或斗はもうこれ以上……傷つかないで。私は……本当にバカだった…。無意識のうちに、刃物を握って…。色々なものを傷つけて…或斗の心も傷つけて…。本当に、ごめ、んなさい…ッ!」







「み、な…。」





或斗からも一筋の涙がこぼれる。






そして或斗に近づき、美奈さんは震えている体で弱々しい或斗をそっと抱きしめた。





美奈さんの妹さんは聖龍のせいではなくて、病気で亡くなった。





なら或斗……もう、これ以上聖龍を憎まなくていいじゃない。





……本当に良かったね。






或斗…。