「……本当にキミ…姫じゃないの?」
こいつは驚いた顔であたしを見る。
……あたし、やっぱ今弱ってるんだ。
人の温もりを必要としてるんだ。
「姫なんかじゃないの。あいつらなんかの姫に…なるわけない。あたしはあいつらの被害者なの」
そしてこいつの表情はだんだんと険しくなっていく。
「……被害者…か。実は…僕の…知り合いにも被害者はいるんだよ。聖龍の総長に無理矢理女にさせられて、そして要らなくなったらって捨てられたんだ。そのあと…直ぐに自殺したそうだよ…。詳しくは知らないけど、僕はそう聞いた」
聖龍の総長……龍翔。
そして、その子は自殺。
なに、それ。
人を殺したくせに平気な顔で毎日を過ごしているとか。
あんなところで一瞬でも安らぎを覚えたあたしは、本当にバカ以外の何者でもないな。
てか、人殺してるのに女一人守れない族が何とか…って、よく言えたもんだよ。
押さえられている腕に力が入る。
どれだけこいつが聖龍を恨んでいるかが良く分かった。
……あたしを連れ去るときに見せた非道な姿は、聖龍に対する憎しみから来たんだ。
「……へぇ。それであたしを」
「あいつらは許さないよ。そのためならどんな手だって使う」
復習、ね。
でもあたしはそんなことはしない。
ただ、あいつらに傷つけられた心を他の男に癒してもらう。
もちろん、癒されるわけないけど。
空しいだけって分かってるけどやめられない。
「……ならさ、今あたしを抱いてよ。あたしはあんたの嫌いな聖龍の姫かもしれないんだよ?あたしを壊しちゃおうよ」
あたしを抱くことでこいつの恨みが少し晴れるなら。
あたしの心が少しでも休まるなら。
こんな体、くれてやる。


