~D*A doll~






「別に良いじゃない?楽しもうよ?これから」





そして……そっとキスをしようと顔を近づけたとき……。





こいつの頭のすぐ横に立てていた腕をぐっと引かれ、姿勢が崩れた。





……ッ!?





そしてそのまま視界が回る。





……え?






いとも簡単に……形勢を逆転されてしまった。





つまり、あたしの上にこいつが跨った。




こいつの顔が近くに感じる。





一瞬の事でさすがに少し驚く。






「…やっとその気になってくれた?」






驚きを隠しながらも、こいつの目を見つめながら言葉を出す。






「まさかね?キミ、面白いね。僕が思っていた子と少し違ったよ。」






……え?





思っていたこと違う?






「……それ、どういう事?」






今…何の話をしてるの?






あたしとヤるんじゃないの?





そしてこいつは、あたしの期待を裏切るような発言をした。







「キミさ、モデルのスカウトを今日受けたでしょ?あれ、僕の兄。兄から少し聞いた話とは全然違うんだよね…。」






……は?






スカウトって…?







あぁ…。






覚えがある。






あの街でしつこかった男の事?






お兄さんだったの!?







こいつの兄で何かをたくらんでいたから…あんなにしつこかったんだ。







「…あのスカウトってあんたのお兄さんだったんだ…。」







……だからだ。







最初にこいつとあった時に誰かに似てると思ったのは。







「そうそう。僕の兄。で、インターネットに写真を載せたのも兄。」






…インターネットって…。






「インターネットの、すっごい迷惑したんですけど。もう少しであたし…本当に居場所がなくなってたし。てか、あんたのお兄さんあたしの事をずっと見張ってたわけ?」







あのサイトのせいで父親の名前が挙がって危うくあたしの存在が世間にばれるとこだった。






それにあのサイトのせいで色んな男に疑われた。






あのサイトのせいで……。





本当、あり得ない。






どれだけ色んな思いをさせられたんだっつーの。






でも思っていることは言わず、こいつの言葉に耳を傾ける。






「まぁね?色んな男に媚びて、挙句の果てに教師までに手を出したらしいじゃん…キミ。甘えまくってたって聞いたけど…。僕には甘えてこないんだね?」







……で?






次は何を言い出すの、こいつ。







教師って咲哉君だよね……。






何で知ってるのって…。そっか。







あの屋上の写真があったからこいつの兄に見られてたんだろうな。







……はぁ。






咲哉君かぁ。






咲哉君……もうここに一生閉じ込められて会えないのかな。







でも、もう傷つけられるなら会わない方がいいのに。





心の隅では会いたいって思ってる…。







咲哉君に助けに来て欲しいって。





こんなとこから早く逃がしてって。





……咲哉君……。




咲哉君に思いをはせていたが、こいつの言葉で我に返った。





「……何考えてるの?」






……何だっけ。






あぁ。






何であんたに甘えないのかってね。






「…何でもない。あたし今、男に甘い声出して甘える事したくないんだよね…。」






「……何で?」





……しつこい。






そう思いながらも言葉をつづける。






「あいつら…聖龍にひどい目に合わされたから。もうあたし、笑い方とか良くわかんなくなっちゃったんだよねぇ。」







……ってあたし…。





何、こんなことこいつに話してるんだろ。