そう言い放って、道も分からない癖に走り去ろうとすると…。






「おーっと!逃がさないよ?」






グッと、手を引かれた。






その反動で体が傾く。






「キャ…!」






慌ててバランスをとり、足を地面にしっかりと付ける。






なんとか、こいつに倒れこまなくて済んだけど…。






がっしりと手を掴まれてしまっているので、抵抗が出来ない。







「ゴメンねぇ。今お姫様を逃がすわけにはいかないんだぁ?」






男はあたしに近寄り、耳元でそっと囁くようにして喋る。







「……ッ」







鳥肌がたつ。






ヤダ…。






気持ち悪い…。






男から慌てて一歩離れ、何とか逃げようと腕を捻らせるが…。






男はあたしの手を離さない。






離さないどころか、掴まれている腕に力が込められる。





い、痛い……。






恐る恐る近くにあるこいつの顔を見ると……。






酷く、歪んだ笑みを見せていた。





ビク…ッ!!





その笑顔に、一瞬体が震える。






なんとも言えない恐怖があたしを襲う。






孤独だと感じる時の恐怖が何倍も集まったような感じがして吐き気すらもしてしまう。







「ヤ…ッ!離して……。」





怖い。





ただ、怖い。





もう、こいつも聖龍の奴らも何なのよ…。






「あはは!その顔いいねぇ?綺麗な顔をもっと歪ませてよ?」






何なのよ、一体。





恐怖でガタガタと体が震え出す。






そしてギリギリと今以上に腕の力を入れてくるこいつ。





腕は血が止まっていて青白くなっている。





「…手、離して…。逃げ、ないから。」






痛みで息が荒くなる。




声が思うように出ない。





「絶対逃げないでよ?まぁ、逃がしたりなんてさせないけど。」