そのまま倉庫を走り去ってどれくらいの時間がたったのだろう。
ただ、走り続けた。
……ここどこなのよ。
立ち止まってあたりを見回すと…、
周りには公園と住宅街があるだけ。
初めて来た場所だからここがどこかが分からない。
もちろん帰り道なんて知るわけがないし。
そんなことを思いながら途方に暮れていると…キャッキャッという明るい声が耳に入った。
その声の場所をたどると、公園があった。
そこには小さな男の子と、お母さんが遊んでいる光景があって。
2人で楽しそうに遊んでいる。
優しい視線で息子を見る母親、そしてそんな母親に嬉しそうに抱き着く息子。
お互いに信頼関係があり、そこには愛がある。
自分には一番縁のない光景だ。
あんな輝くような笑顔はないし、暖かい家庭も……もちろん愛なんてない。
すると、こちらを向いて母親に抱き着いていた男の子とふと目が合う。
いたたまれない気持ちになり、慌ててそらした。
「……もう、やだ。」
そう思うと本当に自分がみじめに感じる。
笑顔や家庭だけではない。
あたしは何一つ持っていない。
今必要な携帯すら、帰り道すらも。
はぁ、と溜息を付きそうになっとき、