「よりによって何で今の時期なの…?もし、莉々香ちゃんが[毒牙(どくが)]に狙われたりしたら…?」
あたしの隣でチビはとてもうろたえていた。
姫って何…?
毒牙って何…?
どんどんどんどん不安が積もっていく。
「……莉々香がもし何かあったら、倉庫に連れてきた俺の責任だ。だから………莉々香を姫とする。」
龍翔のこの言葉により、場に緊張が走る。
「龍翔、それはちょっと待ってください。いくらなんでも櫻井莉々香を姫とすることは認めれません。姫では無くても守ることはできます!」
龍翔の言った言葉にすかさずメガネが立ち上がって口を挟む。
そして、そんなメガネを鋭い視線で睨む龍翔。
「雅、これは総長命令だ。どうせ噂は広まっている。このままだと明日…今日にでも莉々香に被害が及ぶ。もし莉々香が死んでみろ?雅…お前はどうする?俺らは女一人として守れねぇような族作ってんのか?んなもん違うだろ。」
メガネはただその言葉に悔しそうにうつむくだけ。
「……僕も、龍翔に賛成だよ。僕は莉々香ちゃんを守りたい。例え莉々香ちゃんが……どんな子だったとしてもね。」
チビの方を恐る恐る見つめる。
チビはそんなあたしににっこりとほほ笑んでくれて。
そこに、屋上での恐怖は全く感じなかった。
すごく……何も理解できていないあたしの不安が取り除かれるような笑顔だった。


