「って、いきなりなんだよっ!?何で抱き着く!?俺、教師だぞ?」
あたしから一歩離れ、一人でオロオロ戸惑っている先生。
「教師でもカッコいいもん」
「かっこいい!?それよりもここ、ここ、職員室!!周りに先生方がいるから!」
そんな焦りまくっている先生をキョトンとした顔で見てやる。
あたしは何も知りませんよー的な顔。
すると職員室にいる先生の誰かがあからさまに「ごほっ」と咳き込んだ。
先生はまたアワアワとしだして、あたしの横を通り廊下へと一目散に逃げた。
そんな様子に笑いながら、あたしも外に出て職員室の扉を閉める。
先生は廊下で疲れ切った顔をして「とりあえず、教室行くか…」と、か細い声であたしに言ってきた。
それに答えるように先生の腕を掴もうとするけど、今度はするりと交わされて、先生はそのまま歩き出す。
「え、ちょっと待ってよ!」
そんな先生を追いかけているうちに、いつのまにかまだ誰もいない教室へと着いていた。
普通に綺麗な教室。
鍵を開けて中に入る先生に続き、あたしも教室に入る。
「ここがあたしのクラスかぁー?咲哉くぅーん?イケメンっている?」
「……なんで咲哉君なんだよ」
「え?そこは気にしちゃダメじゃん」
からかってみただけだけど、これからは咲哉君って呼ぼうと心の中で決心する。
「イケメンなぁー。いるっちゃいるが…。莉々香は絶対に関わるな。ぼっこぼこにされっぞ?」
咲哉君という呼び名については綺麗に無視され、物騒なことを言い出す咲哉君。
…?
疑問に思いながらも、一番前にある机へと座った。
咲哉君は目の前にある教卓にもたれかかる。
「…何でぇ?あたしを否定する…ってか、ボコる男なんているわけなくない?」
「……はぁ。だからだよ。」
訳が分からなくて、咲哉君をガン見。
咲哉君は気まずそうに顔を下へとむけた。
「莉々香……暴走族って知ってるか?」
「ぼ、暴走族…!?」
いきなりの単語に声が少し裏返ってしまった。
「んまぁ、簡単にいうと喧嘩の強いバイク大好きなヤンキーの集まり」
「……なにそれ。で、喧嘩が強いからあたしがぼっこぼこにされちゃうの?」
「いや、違う。あいつらは莉々香みたいな女は大っ嫌いなんだよ」
「……は?」
どういう事?
あたし見たいなって?
可愛い子のコト?
「あいつらは顔だけしか見てないような、しかもガンガン媚び売ってくるような女の事が世の中で一番嫌いなんだよ。」
「ふぅん…」
そんなもんなの?
可愛い子に媚び売られたら普通男は喜びそうだけど。
それに人って顔だけしか見ないでしょ?
性格なんて容姿の二の次。
理解できない咲哉君の言葉に相槌を打つことしか、反応ができない。
「…てか、咲哉君詳しいね?」
何でそんなに知ってるの?
あ、教師だから?


