「もう、忘れるんだ。」 彼は一層声を低くして言った。 彼の瞳の奥は揺れていなかった。 「どうしてそんなこと…」 「じゃあ伊澄は覚えていることでなにかいいことがあったのかよ。」 わたしは下唇を噛んだ。 「考えて考えて、なにかいいことがあったか?」