「実家には帰らないのかよ?」
千樫は常温のお茶を一気に飲みほしてフローリングに大の字になってねっころがっていた。
わたしは小さなソファにすわって
結伊は千樫の向かいに座った。
「帰らないね。」
「ね、結伊の実家ってどんなところなの?」
うーん、そうだねえ
彼はぐうっと背伸びを一度してから静かに答えた。
「海近く。」
「おっ、いいじゃんいいじゃん。 夏休みお前の実家いこーよ」
千樫は食い付いてのりのりで上半身を起き上がらせて
きらきらした目で結伊に訴えた。
結伊はその目から逃げるように立ち上がってレースのカーテンをくぐってベランダに出た。
「いつかみんなで帰れたらいいと思ってる。」
「でも今年は違う海にいこう。」
彼はぽつりぽつりと答えた。
今日の結伊はなんだか変だ。
わたしも千樫もだまって彼の言葉を聞いた。
彼は誤魔化すようにわらって
あ、譲がきたよ とベランダから身を乗り出した。

