「じゃあどうして3人でいるとき結伊の話をしないの?

どうして避けるの?


どうして千樫はあんなに平気そうに見えるの?



わたしは気を抜いたらからだが粉々になってしまいそうなのに。


凍えそうなほど、悲しいのに。」




それでも譲は繰り返して言った。


「千樫は忘れてしまった訳じゃないよ。」


譲は鞄のなかから写真を取り出して、わたしにくれると言った。


「俺も忘れてしまった訳じゃない。」



4人でとった写真だった。


わたしたち3人はおなじような顔をして笑っているのに、


結伊だけは笑いもせずに遠くを見ていた。


結伊は写真をとるのを極端に嫌がった。


これがたった1枚だけの4人で撮った写真。