「なあ、伊澄最近おかしくない?」
わたしたちは本棚1つぶんくらいの距離を開けて歩きながら話していた。
わたしは本を探すふりをしていた。
振り返って譲のほうを向いて、まっすぐ目を見て話したら
核心をつかれてしまいそうで
それが怖かった。
譲は猫のようにしなやかで、勘に鋭いところがあった。
「なんにもおかしくないって。」
「ご飯は? ちゃんと食べてる? なんだかやつれてるよ。」
「忙しいからね。」
わたしが立ち止まって本を開くと譲は追い付いて、わたしの横に並んだ。
「千樫とは花見からあってるの?」
「なんで千樫の話をするの?」
とっさに自分の口から出た言葉がなんとも変な切り返しだったと気づいたときにはもう遅かった。
「なんで千樫の話をしちゃいけないの?」
わたしは本をぱたんと閉じてその本を本棚に戻さないまま、まどのほうへ向かった。
譲もあとから着いてくる。

