結伊の席はわたしのとなりで、
窓側の後ろから2番目位だった。
結伊の方向を見るたび、背景に窓の外の緑の銀杏の葉っぱが光って揺れていたのを今でもよく覚えている。
「伊澄ってめずらしい漢字だね」
「えっ?」
クラスは学園祭の話し合いで盛り上がっていて、
普通に会話するのが少し困難なくらい騒がしかった。
でもそれが、わたしと結伊の話し声をうまい具合に隠してくれたのかもしれなかった。
わたしたちは内緒話をするかのように言葉を交わした。
「名前でさ、伊の字を使うのめずらしいなって。」
「そうかもしれないね。わたしはあんまりこの字気に入っている訳じゃないんだけどね。」
「俺もおんなじ字を使うの。 ほら」
彼は一気にこっちに身を寄せて、生徒手帳を見せてくれた。 すこしどきっとして一瞬身が固くなった。
「紺野結伊? あ、ほんとだね。」
おんなじ字だね。
2人でくすくす笑った。
学園祭の話し合いは進んでいた。
結伊とまともに話したのはこれが初めてで、
これでわたしも結伊も親近感を覚えて
わたしたち3人のなかに打ち解けることになった。

