「このチョコレートの中に、本命はどれだけあるのかなーって思って見てただけ」



バレンタインになると、一哉はとにかくたくさんのチョコレートを貰って帰ってくる。


ほとんどが義理だろうけど、きっと本命として貰っているものもあるはずだ。


果たして今年は、いくつが本気のものだろう。


一哉はそのどれかに、同じ気持ちを抱いたのだろうか。



「んー、いくつだったっけなぁ」



一哉はもといた場所に座ると、マグカップに口をつけながらちらりと視線をベッドに向ける。



「いちいち数えてねーから分かんねぇや」


「義理と分けて持って帰ってこなかったの?」


「そんなの分けてねぇよ」


「ふーん……」



じゃあ、本命は全部断ってるんだなぁ。


去年も同じ質問をしたけど、そのときは「本命は断ったら義理と同じだから分けてない」って言っていたし。


一哉が今年も本命を受け入れなかったって分かったら、頬が緩みそうになった。

危ない危ない。