現実を掴むように、一哉の背中に腕を回した。


二人の密着度が急に濃くなる。



「あたしも……一哉が好き。また一哉にだけ、チョコレートを渡したいよ」



緊張で震える声はか細かったけど、ちゃんと自分の気持ちを言えた。


そしてどうやら一哉にも無事に届いたらしく、身体を少し離して顔を覗き込まれた。


口角が横に伸びて広がった笑顔が、あたしの真正面で近付いてくる。



「じゃあ、今年はチョコレートくれない代わりに、これで我慢してやるよ」



そんな言葉と共に、一哉の唇があたしのそれに降りかかってきた。


一度目は、掠るように。

二度目は、啄むように。

三度目には急に深くなって、あたしはパニックになった。


息苦しさに混乱しながらも強く一哉の胸を叩く。


そうすることでやっと、一哉の唇は音を立てながら名残惜しそうに離れた。



「ちえりの口の中、あっま。さっきまでチョコ食ってもんな」


「なっ、なっ……!」



突然のキスへの驚きと、けろっとした様子でそう言う一哉のせいで、顔が真っ赤になった。


恥ずかしさで一杯で、湯気が出てきそう。