風鬼。



ボクがまだ桜鬼神になる前から
兄弟のように育ってきた親友。




今は一人になってしまったけど、
あの頃、ボクにも仲間はいたんだ。



風鬼と珠鬼(たまき)は
いつもボクと仲良くしてくれた。




だけど父が死んだある日、
ボクは桜鬼となった。





桜鬼となって初めてボクを苦しめたのは、
親友の風鬼をこの手にかけることだった。





風鬼が事件を起こしたのは、
些細な出来事から始まった。




鬼が闇に捕らわれた。


鬼である風鬼が両親が同族によって
虐殺されたその悲しみに、
心が耐え切れず、闇に捕らわれた。



闇に捕らわれた風鬼は、
毎夜鏡に映る、人の悲しみを食らい
引き寄せ……飲み込み続ける。




どれほどに人を食らおうとも、
風鬼の悲しみが消えることはなかった。





ボクは桜鬼となって
初めてその刀に、親友の血を吸わせた。






息が途切れる間際、風鬼は小さく「有難う」って呟いた。









だけどそれ以来、ボクたちの関係は
変わってしまった。




桜鬼神の存在が誰であるかは
一切知られていない。



ただ風鬼が桜鬼神によって
殺された。





その事実だけが広がった。