「わたしに言わないなんてね。どういうことかしら?」
朝美でも君太でも花鈴でもない冷たい声。
自然に体がびくっとなる。
「何しているの?まさかメディアに言うなんてね」
「・・・好きな奴を守るためだ。・・・邪魔しないでくれねぇか?」
「あのね。わたしは社長なの。社長が知らなくてどうするのよ」
「社長って、テレビ局のだろ。知らなくちゃいけない社長は、所属事務所の社長だけだ。
あんたに言う義務はないはずだ」
「あるわよ。わたしはあなたの母親だもの」
「へぇ。縁切るって言ったのはあんただろ?今更母親面かよ」
我ながら冷たいな。
「ええ。でも言わせてもらうわ。どうしてバラす必要があるのよ。
あなたも花林もスキャンダルは1番恐れなくちゃいけないものよ。
まだメディアはあなたと花林の交際に気が付いていないわ。
知らない情報を、どうして教えちゃうのよ。
あなたも花林も、仕事が減るわよ?」
「それは困るな」
「じゃあ今すぐ記者会見をやめなさい。
何かあってからじゃ遅いのよ」


