『・・・ねぇ、待ってぇ?』
少し眠そうな、とろんとした声。
振り向くと、弟くんがこっちをあの濁った瞳で見ていた。
『いつかぁ、芸能界で会おうよぉ』
芸能界?
『兄貴ねぇ、芸能界入るのぉ。君もさぁ、入りなよぉ。
それでさぁ、僕らにぃ、将来ぃ、会おうよぉ!』
『そうだな。会おうぜ』
『その日までぇ、僕らさぁ、この瞳(め)を直しておくからさぁ』
『ああ。見てろよ?』
・・・楽しみだと思った。
『うん!私、モデルになる!いつか会おうね!
その日まで直しておいてね!』
私はニコッと笑って、その部屋を出て行った。


