『一刻を争う事態だと?・・・もう少しまともな嘘はつけないのか。
お前のことだ。どうせ寝坊でもしてモデル界のプリンスと呼ばれるあすくが出るイベントに遅れそうなんだろ?テレビ局だから、生放送か?』
「・・・遅刻だったらわざわざあんたに連絡はしない」
『じゃあなんだ。俺を納得させられる嘘をつけ』
「・・・花鈴が誘拐されたんだ」
『かりん?かりんって、あのモデル界のプリンセスって呼ばれている花林のことか?』
「ああ。そいつが誘拐された」
『・・・考えた嘘がそれか。くだらないな。あのな朝太。
誘拐事件がそう簡単に起こるはずないだろう。サスペンスドラマじゃあるまい』
「嘘じゃねぇんだ。そして花鈴は俺の彼女だ」
『言っているだろう。もう少しマシな嘘を言え、と。
あのトップモデルと朝太が付き合えるはずは天地がひっくり返ってもない。
誘拐事件もあり得ない』
「あり得るからこうして連絡しているんだろうが。俺だって縁切った兄さんに連絡なんてしたくねぇよ」
『・・・切るぞ。くだらない』
「じゃあ朝美に聞け。俺なんかよりよっぽど兄さんも信頼しているだろ?」


