「・・・朝太、だけど」
朝太・・・。
「東堂朝太・・・」
「なっ!何でお前が兄貴のことを知っているんだよ!」
「何でって・・・。彼女、ですから」
「は・・・?かの・・・じょ?」
明らかに吃驚している君太くん。
私、何か変なこと言いましたっけ。
「・・・デタラメ言うんじゃねぇよ!」
いきなり君太くんが、私の胸ぐらをつかんでくる。
「兄貴に彼女なんているわけねぇだろ!?
見え透いた嘘つくんじゃねぇよ!」
う、嘘じゃないよっ!
「兄貴はそう簡単に傷を癒せるほど強い人間なんかじゃねぇ。
てめぇなんかの女に、この俺が騙されるとでも思っていたのか?」
「き、君太くんっ・・・!く、苦しいよっ!」
「てめぇみたいな女に、兄貴の苦しみがわかると思うなっ・・・!」
君太くんの可愛らしい子犬のような瞳は、どこにもなかった。
私を見つめる君太くんの瞳は、
どこか苦しげで
どこか寂しげで
でも、
人を憎む目だ。


