張り詰めた空気に意識を持っていかれまいと息を詰め、有正は足の感覚を確かめる。 そのまま通り過ぎようとしたとき、唐突にその瞬間は訪れた。 つかの間の悲鳴がまず彼の耳をつんざき、次いで、おそらく口を覆ったのであろうくぐもった声がドアの隙間から洩れてくる。 悲痛のうめき声の合間から、ゆうせい、と助けを求める声が聞こえるような気がした、かもしれない。 けれど、その彼の手が取っ手に触れることはなかった。 代わりにその手は通路とを隔てる入り口の取っ手を掴んでいた。