遠い曙、街灯の明かりが道行きの頼りとなる早朝に、菜々子は例のフェンスの前にいた。 その縁(ふち)に、決意と共に御籤を結ぶようにメモをくくる。 どの学校も、おおむね明日が始業式。 部活に所属する者ならもうおおかたのところで部活初めを終えていることだろう。 きっと気づいてくれる。 菜々子は白い息を吐き出す。 暫し後ろ髪を引かれる思いでメモを見つめた後、心を鬼にして踵を返した。 ――それから一時間ほどが経った頃、ひとりの男が線路を渡った。