あやふやな感情のままぶつかってったって、必ずどこかで気持ちが反発するよ。
だって心はずっとちぐはぐしてるんだもん。
ともすれば思い出される、有正の苦言。
それが表すわたしの心。
中途半端な好きと嫌い。
どうして、と苦笑する。
基本、人とのやりとりを拒絶する彼が、何故こうも人の機微を穿ち、言葉に表せるのか。
でも、だからこそ見えたものもあった。
自分でも手に余る、わからないことだけの感情を理解しやすい形にしてもらって、はじめてリアルという手ごたえに触れた気がする。
あのキスからこっち、菜々子の頭の中は常に被害者意識ばかりが占拠していた。
本当は、そうすることで余計に頭を使わないようにして、どうとも心を決めかねているいやな自分から目を背けていただけだ。
有正の言葉が骨身に沁みた。
情けない自分が、より鮮明に、より濃厚に、浮き彫りになった気がする。
(実は、自分が思うよりずっと、軽い気持ちだったのかも。復讐のつもりで踏み込んで、本当は彼に会うための口実が欲しかっただけ、とか……)