「翠ほんと、クレーンゲーム上手いよね」
「ここ照れるとこ?」
「うん」
翠が歯を見せて笑う。
「照れるわ~」
「素直じゃん」
私も笑ってみせる。
翠は、知らない。
私が律を好きだったことを、きっと知らない。
…中2の4月。
神社で雨宿りをしていた時、初対面だったのにタオルをかそうとしてくれた一人の少年。
おまけに家まで送ってくれて、次の日風で休んだ私に電話までよこしてくれた。
…陸上部の、奥原律くん。
…翠の、友だち。
気づいた時にはもう律のことを好きになっていた私。
でもある日律に手渡されたラブレターは、律からじゃなくて、翠からだったんだ。
律を忘れるために、翠の告白を受け入れた、
…なんて。
こんなまっすぐな彼を前にして、口が裂けても言えるはずがなかった。
言えないまま、一年。
今日が一年記念。


