顔をあげて、言葉が出なくなった。



「ちゃんと見ててね?ゴール決めるから」

「ち、近いって!」



あたしに顔を寄せて、ちょっと自信有り気にそう言った葉山くん。


思わず後ずさると、葉山くんは笑いながら体勢を戻す。



「……陽菜」



幻聴かと思った。

その声に、久々に名前を呼ばれた。


男の子であたしを呼び捨てする人なんて、幼なじみしかいない……。


葉山くんがあたしのうしろの方を見て、顔をしかめる。