「トイレ混んでた?」 「いや、トイレは空いてたよ」 「え、じゃあ……」 手にしていたコップを棚に戻して、あたしに心配そうな顔を向けるしいちゃん。 あたしはちょっと笑って、ため息をついて見せる。 葉山くんのこと、話そうかな。 「ナンパされた!?大丈夫だったのっ?」 「えっ、それはないから!」 しいちゃんはなんの心配をしてるの。 ナンパなら、しいちゃんの方がされるよ。 あたしはコップに触れながら、口を開く。 「葉山くんって人に会ったんだ」