首をブンブン振って否定すると、しいちゃんは怪訝な表情を見せながらも、また香水に目を移した。


……いつだったかな。

夏希に少女マンガのセリフを言われたことがあった。


お互いの顔が近くて。

部活後だったのに、シトラスのいい香りがして。


あたしだけが、ドキドキしてた。



「……ごめん、ちょっとトイレ行ってくるね」

「はーい!お店の中にいるからね」



しいちゃんに一言告げて、あたしはお店を出る。


確か、右に曲がったところにトイレがあったはずだけど……。



「……?」