先輩は入ってすぐの野菜コーナーにいた。

手にはニンジン。


……おつかい、なのかな?

峰岸先輩は一緒じゃないみたいだし……。


って、一緒なわけないか。

明日はバレンタインデーだもん。



「あっ、君は確か……」



先輩はあたしのことを覚えててくれたみたいだけど、言葉に詰まっていた。


……それもそうか。

あたし、自己紹介さえしてなかったよね。



「……去年は、いきなり失礼しました。あたし、古藤陽菜って言います」



もう、去年の出来事。

先輩が好きだったのも、フラれたことも。