ふわりと優しい抱擁だった。
『トキワ?』
「ヨリ、シたい。」
心の底から発したような声だった。
人形のような無機質さは全くなくて、トキワの本当の声を聞いた気がした。
『もう無理ってさっき言ってなかったっけ?』
「わからないけど、ヨリとシたい。」
『駄目、私好きな人がいる。』
「それは…これの持ち主?」
振り返ると、これ、と言いながらトキワは自分の着ているスウェットをつまんだ。
お風呂からあがったトキワに着せるものがなかったから、久世のスウェットを貸したのだった。
『そう。』
「ならやめておく。私物を置いていくような仲の男にもしバレて、きみが傷つくのは嫌だ。」
『恋人じゃ、ないんだけどね。』

