「家柄でも財産でも勝っているのに、どうして勝てないの」 「音……」 「わたしの何がいけないのよ!!!」 そう叫ぶなり、音は持っていた本を床に叩きつけた。 初めて見る音の怒って取り乱す姿に、俺はどうしたらいいかわからなくなる。 するとすぐに、音の瞳から涙がこぼれた。 ーーー嘘だろ、音が泣くなんて。 「泣くなんで信じられないって思ってるんでしょう」 思っていたことを言い当てられ、俺はひるんだ。 まったく、その通りだ。