ああでもならないと、俺はきっとはるに言うことができなかった。 別れを告げられなかったんだ。 「……これが望みだったんだろ」 「何のこと。言い方悪いわね」 「俺とはるが会わなくなって、それで満足か」 自分の部屋の椅子に座って本を読んでいた音は、ゆっくりと俺を見た。 「やっぱり、ずっと会っていたのね」 「……だったらなんだ」 「初恋の人なの?」 「え?」 そんな質問がくるとは意外だった。 音が何を考えているのかよくわからない。