「心配しなくてもよい。どうせ、結界は通り抜けられない」


その言葉に、あたしは目をキッと吊り上げてルカを振り返った。


一瞬、ルカがウッ……とたじろいだ様子だった。


「ほんっと、あたしの教育のおかげで少しは王子っぽくマシになったかなと思ってたのに、あんな発言王子失格だよ!!」


「なに?」


ルカが眉間にシワを寄せる。


「おまえが俺にどんな教育をしたって?」


「したでしょうが!!そもそも、あたしはあんたの教育係として魔界に来たんだからね!!そこんところわかってんでしょうね!!あんたは魔界の王子でも、あんたの面倒をみるのはあたしなの!!あんたの発言の管理をするものあたしなの!!」


我ながら勝手な言い分だと思ったけど、こればかりは仕方ない。


屋敷を守る為だもん。


もし本当に庵可くんの足が速くてずっとついて来れられてたらどうする?


山の中で、結界の中に消えていく姿を見られるんだよ!?


そしたら翌日、学校中にそのことが広まって一気にルカの正体が全校生徒にバレるんだから。