「太一、転校生って女?」
クラスの男子がテンション高めに聞く。
「残念だったな、男だよ。それも超イケメン」
美女を想像していたであろう男子に憐みの表情で太一が答えると、項垂れる男子とは裏腹に、女子はキャーッと黄色い声を上げた。
男の子か……。
どっちかと言うと、女の子の方がよかったな。友達になれるし。
机に頬杖をついてため息をつくと、あたしの斜め前に座る親友の梓が目をキラキラさせてあたしを振り返った。
「サラ!! 超イケメンだって!!」
イケメンに弱い梓は、椅子の上でお尻を激しくジャンプさせるようにはしゃいでいた。
梓の黒のセミロングが左右に大きく揺れている。
あたしは、”イケメン“登場が待ちきれないという風に落ちつきのない梓の後ろ姿を見て、頬杖をつきながら口をへの字に曲げて肩をすくめた。
どうしても、梓の言う"イケメン“だとか”恋愛”だとか、そういうものに興味が持てない。


