あんなに殺しておいて、何が物足りないっていうの!?
「悪魔達を殺したからって、アイツらの心にはあまりダメージを受けないだろう?」
二ヤリ。と、庵可くんが笑う。
「最も大事な物を傷つけられて初めて、心がえぐられるような思いをするんだ」
最も、大事なもの……。
「王子が愛した女。おまえだよ」
庵可くんが、顎であたしを指した。
「王子の目の前であんたを殺したら、アイツはどんな顔をするかな~。想像しただけでゾクゾクするな」
またふたりが笑い合う。
「俺は、最初からあんたに近づく為に人間界に来た。ただ誤算だったのが、王子までもが人間界に来た事だ」
「…………」
「ずっとあんたに付きっきりでいるから、また余計な時間を食ってしまった」
チッと舌打ちをした庵可くんは、面倒くさそうに体重を片足にかけた。
「あんた達ふたり……今あたしを殺そうと思ってるんだろうけど、そう簡単には出来ないよ」
強く言うつもりだったのに、出た声はあまりにも頼りなくフラフラしていた。
「どういうことだ?」
バカにしたような笑みを浮かべる庵可くん。


